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北京五輪で問題視される大気汚染事情

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この写真は2005年11月、大気汚染の最悪レベル「5級」に侵された北京の姿である(人民網日文版)。大気中のさまざまな汚染物質の濃度が高くなり、特に粒子状浮遊物の濃度が急速に上昇。このとき環境保護部門は、外出をなるべく控えるよう市民に呼びかけている。

さて、男子マラソン世界記録保持者のハイレ・ゲブレシラシエ(エチオピア)が大気汚染と高温を理由に北京五輪のマラソン欠場を表明した件については、ご存知のとおりかと思う。

「大気汚染の北京五輪マラソンは大変」世界トップランナー(MSN産経ニュース)

「北京でマラソンを走るのはとても大変なことだ。42キロ、2時間以上だよ。正直言って走るのはとても困難だ。歩くことだって難しい。大気汚染の問題はとても重要だ。五輪期間中だけじゃない。ここに住む人々にとっても苦難だ」

歩くことすら困難──
その発言の裏にある実情について、もう少し探っていきたい。

■北京の大気汚染はどれほど深刻なのか?

中国では独自に大気汚染のレベルを設定しており、その汚染基準値を下回る1~2級を「青空」と呼び、4~5級は重度汚染としている。
2007年、北京の大気測定結果は以下のとおり。

1級: 32日(8.8%)
2級: 214日(58.6%)

3級: 107日(29.4%)
4級: 9日(2.4%)
5級: 3日(0.8%)

中国通信社より

これだけを見ると、年間246日(約8ヶ月)は北京にも青空が広がっているということになる。しかし繰り返して言うが、これはあくまで中国独自のレベル設定である。
これをWHOの基準値と比較してみるとこうだ。

WHOの空気質ガイドライン
(1立方メートル当たりミクログラム)
PM(粒子状物質): 20以下
二酸化硫黄: 50以下
二酸化窒素: 40以下

中国の大気質指標
(1立方メートル当たりミクログラム)
1級: PM(粒子状物質)/二酸化硫黄/二酸化窒素ともに0~50
2級: PM(粒子状物質)/二酸化硫黄/二酸化窒素ともに50~100

一目瞭然だが、2級(青空)はWHOの基準値を超えている。
となると、甘く見積もっても北京ではほとんどWHO基準値を満たしたことにはならない。

さらに北京・上海・東京の大気汚染を比較してみよう。

表1:北京・上海・東京の大気汚染比較
(1立方メートル当たりミクログラム)

                                     
PM(粒子状物質)二酸化硫黄二酸化窒素
WHO基準値205040
北京(※1)1415066
東京:一般局(※2)29225
東京:自排局(※2)33236

※1:中国統計年鑑2006「中国主要汚染都市の大気質指標(2005年)」より
※2:東京都庁報道資料「平成18年度大気汚染状況の測定結果について」より

残念ながら東京もWHOのPM基準を満たしていないが、北京の大気中には東京の5倍近くにも及ぶPM(粒子状物質)、25倍の二酸化硫黄、約2倍の二酸化窒素が含まれていることがわかる(各都市の最新データをもとにしたため、北京のデータが東京に比べて1年古いことはご容赦いただきたい)。

さらに世界銀行による推定では、中国において「常にWHO基準値を超える浮遊粒子状物質が存在する環境」に生活する人が10億人以上、大気汚染が原因で治療を受ける人が毎年35万人もいるという(レコードチャイナ)。

■一方、IOCと中国外務省の見解は・・・

ここまでのデータが揃っていながら、IOC医事委員長は北京五輪のマラソンについて以下のような発言をしている。

「北京の大気汚染は過剰反応」IOC医事委員長(MSN産経ニュース)

「世界で実施されている都市マラソンも、それほどきれいな空気の中で走っているわけではない。過剰反応ではないかと思う」「仮に世界保健機関(WHO)が定める一般的な基準値を超えていても、鍛錬しているトップ選手なら競技に支障はないだろう」

「鍛錬しているトップ選手なら競技に支障はないだろう」
捉えようによっては、アスリートに対する人権侵害と言われかねない危険な発言である。イギリスでは学術機関が選手たちに北京対策マスクを配布するそうだが、IOCとしての策は講じないと断言しているようなものである。

これに対して、中国外務省の秦剛副報道局長は今月11日の定例会見で「五輪前に総合的措置を講じる。期間中は排出量を削減し、清潔で優良な環境を提供する」と語っている(時事通信より)。しかし、もはや一過性の施策でどうにもならないことは火を見るより明らかである。

■参加者6,000人が治療を受けた香港マラソン? 

さて、これは昨年3月4日に行われた香港マラソンの写真である。空がモヤモヤとして見えるのは、もちろん大気汚染によるものである。

Hongkong20080304

AFPBB Newsではこの2007年、参加43,956人中およそ6,000人が治療を受け、その内の1人は重態だったとされている。一方、中国新聞社によると2006年は約5,000人、2007年は3,747人、今年2008年は2006人が手当てを受けたと情報にばらつきがあるが、いずれにせよ対象者は数千人レベルだったことは間違いなさそうだ。

当時は「大気汚染がひどくて倒れる人が続出」と報じられていたようで、香港大学(The University of Hong Kong)のAnthony Hedley教授は「汚染された空気の中で運動することは心臓疾患の危険性を増す」と主張。

これはマラソンに限ったことではない。
「歩くことすら困難」という、ゲブレシラシエの言葉を思い出してほしい。

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